詩作1
こんにちは、文芸部部長兼プロラボ部名誉部員の字楽(ペンネーム)です。
せっかく名誉部員にしてもらったし、高専生活も今年で最後(の予定)ってことで何か爪痕残したいなと思いつつ色々画策しておりました。しかしどうも上手くまとまらず、こりゃ駄目かなと思っていたところ、ある二日酔い気味の朝(具体的には十二月十四日)に天啓を得て、その日の夜になんかよくわからん詩のようなものを書きあげることに成功(?)したので、ここに書き残すことにします。うん、文芸部員らしい。
詩とか小説とか、衆目に晒すと大概黒歴史になり果てるのがオチと言われてますが、しかしそれをやっちゃうのが文芸部です。ではどうぞ。
--------------------------------
宿酔/字楽
酒を飲んで、不覚にも潰れて寝込んだ次の朝。刺すような冷えた空気が鼻をくすぐり、半分眠ったまま放った己のくしゃみに驚いて目覚めると、窓からは青白い日の出前の光が差し込んでいる。
風呂に入り損ねた顔や体に残った昨日の垢。髪にまとわる脂は野良犬の臭い。磨き損ねた歯の裏に、ざらざらとした汚れ。吐く一息に、微かな甘ったるい酒精の香り。
今日は日曜日ですか?いいえ、月曜日です。馬鹿たれめ。ついた悪態、地球を一周して後頭部を打った。
かと思うほどの、不意打ちの痛み。芯を揺さぶる頭痛。
時計を見てはうううううあああうと唸って唸って布団跳ね上げ床に立つと、八時間睡眠という事実に反する体の重さ、油切れの肘膝、焦点ふらふら、嘔吐寸前を十とすれば、二から四くらいの吐き気。この世は地獄。
東向きの窓開けて、ゴールデンバット窓の淵に、とんとん叩いて詰める仕草も様にならず、ライターカチカチ、吸って吐いて、まだ赤くならない地平線を眺め、コバルトブルーという言葉を思い出す。
ああ頭がかゆい、背中が、腹がかゆい。そりゃ風呂に入ってないんだから。ボイラーに火を入れて、ぶるぶる震えながら服を脱ぎ、冷たいタイルに跳びあがる。水が温まるまでに凍え死ぬほど時間がかかって、ようやく頭から熱い湯をかぶると、垢と脂と酒精の香りが湯気に溶けては漂って、この瞬間はきらいではない。
顔を、髪を、体を、乱雑にこするたびに魂が形を取り戻して、ああ、何か腹に入れなければ。胃袋はいやいやと首を振って不快だけれど、それでも何か入れなければ始まらない。タオルを何枚も贅沢に使って、下着だけは着替えたあと、まだ生ぬるい寝間着をいったん着なおす。
戸棚に即席味噌汁があった。湯冷めてかじかんだ手でやかんを火にかけ、茶碗に味噌と具を開ける。カンカンに沸かしてしまった熱湯を少なめにいれてから、水を足してかき混ぜる。味噌渦巻きただよう液面に、そろそろ朝日の赤が差す。
一口の味噌汁が温かく舌を撫で、喉を流れ落ちると、青ざめひび割れた食道と胃袋が血色を取り戻す。清浄な、肺に一杯の空気を吸い込み、焦点ぴたり、体中の筋に力湧き、ようやく、ここにあるのは正常な自分、自業自得の地獄の景は既にない。
さあ歯を磨け、ワイシャツ着てネクタイ締めろ、くせ毛なりにも髪整えて、鞄持て、眼鏡も忘れるな。あと一歩、玄関出ればお前の勝ちだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
はい。書き上げてみると、「これは詩と呼んでいいのか・・・?普通に句読点使ってるし。」と自分でも思う仕上がりですが、口語自由詩ということで勘弁願いたい。あと味噌汁飲んだくらいで二日酔いが治るなら苦労はしない(切実)。
それでは皆さん、メリークリスマス。